頭痛
皆さん頭痛を経験したことがあると思います。多くの方は命に関わるような頭痛ではありません。しかし頭痛がいつもより長く続いたり、いつもと違う頭痛の時は注意が必要です。一方、命にかかわらない頭痛でも痛みのために日常生活に支障をきたしている方も多くおられます。生活習慣の改善とともに、薬を上手に使うことで頭痛と上手に付き合うことができます。
認知症・物忘れ
誰でも年齢とともに物忘れすることは増えます。しかし病的な物忘れである認知症のこともあります。認知症であれば、周囲の皆さんが早く知ってあげることが大事です。最初は軽い物忘れでも徐々に進行して重篤になることもしばしばあります。また物忘れだけでなく、理解力が低下した、意欲がなくなった、人柄がかわったなどいろんな症状をとります。早く認知症を知り治療することで、改善を感じることもできますし、進行も抑えることができます。
その他、病的な物忘れの原因として、認知症だけではなく、「治る」認知症のような病気もあります。例えば風邪をひいて体の調子が悪いときに考える力が低下して認知症のような状況になることもあります。ご年配の方で、頭部を打撲した後しばらくしてから頭の中に血液が溜まったり、脳脊髄液が通常よりも多く溜まることで、脳が圧迫されて認知症のような症状が引き起こされることもあります。脳神経外科的な治療を受ければ症状は改善する物忘れもあります。
頻度の多い認知症
アルツハイマー病
認知症全体の約半数を占めます。脳にアミロイドβなどの老廃物であるタンパクが蓄積し、脳の神経細胞が死滅し、脳の萎縮がおこります。最初に障害されるのが、記憶をつかさどる「海馬」といわれる脳の一部分です。その後海馬から大脳皮質全体に障害が広がります。初期には、最近の記憶があいまいになり、同じことを何度も聞き返すことがあります。進行すると過去の記憶なども障害され、さらには物を盗まれたなどの妄想や、睡眠障害、幻覚、夜間せん妄、徘徊など起こる人もいます。
血管性認知症
脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、脳の血管が破れたり(脳出血)することで脳が損傷し、脳の機能が障害されます。高血圧や糖尿病などの生活習慣病が重要な原因となります。脳の損傷された部分と正常な部分が混在するため、症状にばらつきがあり、「まだら認知症」とも呼ばれます。例えば、記憶障害はあるのに、本を読む理解力はあるという具合です。また前頭葉という脳の損傷も多いため、前頭葉の症状である急激な感情の起伏を生じる感情失禁、抑うつ状態、意欲の低下なども起こる人もいます。
レビー小体型認知症
脳に異常のタンパクであるレビー小体が沈着することで発症し、大脳全体に広がります。物忘れだけでなく(アルツハイマー病より物忘れの程度が軽いことが多いです)、実際には存在しないものがみえる幻視や、パーキンソン病の症状に似て、動作が緩慢になったり、体が硬くなり手が震えたり、小刻みに歩くようになります。また眠っているときに、大声で寝ごとを言ったり手足をばたつかせたりするレム睡眠行動異常という症状を伴うこともあります。その他自律神経がうまく働かず、立ち眩みや便秘なども見られることもあります。
「治る」認知症
慢性硬膜下血腫
1〜2か月前に頭部を打撲したことで、頭蓋骨の内側で脳を包んでいる硬膜と脳の間に、徐々に血液が貯留し脳を圧迫してしまう病気です。高齢者や抗血栓薬(血液サラサラの薬)内服している方や多量に飲酒する方などによく起こります。最近、徐々に元気がなくなっている、様子がおかしい、手に力が入らなくなった、体が傾く、足腰が立たなくなったなどの症状がでます。そのため認知症になったと感じられることもしばしばあります。また若い方であれば頭痛を訴える方もいます。頭部CTなど検査することで、慢性硬膜下血腫を診断することは非常に容易です。また負担の少ない手術で症状が劇的に改善し、早期に元の生活を送ることができます。
特発性正常圧水頭症
過去に脳の病気の既往がないのに、歩行が困難になったり認知症のような症状で元気がなくなったり尿漏れをきたすことが知られています。これは脳脊髄液の吸収障害によって起こる病気です。本来、脳脊髄液は、脳内で産生され、脳内から脳の表面周囲へ循環し吸収されます。しかし脳脊髄液の吸収が障害されるので脳内に余分に脳脊髄液が貯留してしまい脳が圧迫され、脳が働くことができなくなります。高齢者に多く、ゆっくり症状が進行します。「シャント術」という比較的負担の少ない手術を行うことで症状が改善します。CT,MRIでこの病気の典型的な画像が知られています。
めまい
めまいには、フラフラするめまい、グルグル回るめまいの2種類のめまいがあります。そして、吐き気や嘔吐を伴うこともしばしばあります。
めまいの原因はいくつもありますが、脳梗塞や脳出血など脳の病気によるめまいもあります。その時、めまい以外の症状として、物が2重に見えたり、ろれつが回わりにくくなったり、顔や手足の動かしづらさやしびれを伴うことがあります。しかし、めまい以外の症状がないこともあります。ただし、めまいの原因の多くは耳鼻科的な疾患で生じます。数日から長くても数週間で治ることが多いです。めまいの原因の判断は難しいこともありますが、脳の診察、検査を行えば安心できます。
しびれ
手足の先から脳までの間の感覚の経路のどこかで異常があるときに症状がでます。脳梗塞や脳出血など脳に障害があることもありますし、首(頸椎)や腰(腰椎)で神経を圧迫されて生じることもあります。その他手足の末梢で神経が圧迫されたり、炎症や糖尿病などで生じることもあります。
頭部打撲・外傷
日常、不意に頭部を打撲したり、スポーツで打撲することはしばしばあると思います。多くは問題になるようなことはありません。しかし時に生命にかかわったり、後遺症を残すような場合もあります。最初は普段通りでも気づけば重篤な状況になっていることもあります。頭部打撲した際に、意識を失う、記憶が曖昧になる、吐き気・嘔吐する、手足が動かしづらくなる、しびれる、こういった症状があれば、脳の検査が必要です。
小児の頭部外傷
子どもが頭を打撲することはよくあることです。しかし、いざ自分の子どもが頭を打撲すると頭の中で何か起こっていないかと心配になるものです。
子どもが頭を打撲しやすい理由として、体に比べて頭が大きいこと、背が低いために視野が狭いこと、遊びなどに夢中になってしまうこと、またその場の状況の判断や危険がまだわからないことなどが挙げられます。
打撲の原因も年齢によって異なってきます。生後数か月の子どもであれば、ベッドやソファからの転落などが多く、乳幼児であれば階段からの転落が多く、幼稚園から小学生低学年であれば、自転車での転倒、公園の遊具で遊んでいて受傷することが多いです。
頭を打撲すると、たんこぶができたり、出血したりすることも多いです。子どものたんこぶは時にぶよぶよすることもあり、頭蓋骨が陥没しているかのように触れることもあります。頭のけがは頭皮の血流が豊富なためにたくさん出血することも多いです。たんこぶや出血の有無と脳の重症度とは関係ありません。
頭を打撲した後、意識を失っていなかったか、すぐに泣いたか、顔色や機嫌が悪くないか、頭痛がだんだんひどくなってないか、嘔吐を繰り返していないか、けいれんを起こしていないか、などは大事なポイントとなります。
脳卒中
脳の血管が詰まったり破れたりすることで生じる脳の病気です。脳梗塞(血管が詰まる)、脳出血(血管が破れる)、くも膜下出血(脳の血管にできていた動脈のこぶが破れる)などの病気が脳卒中に含まれます。
ろれつが回らなくなったり、体の片側の手足の力が入りづらくなったり感覚がおかしくなったりする症状が多いです。その他にも、意識を急に失ったり、目が見えづらかったり、言いたいことが言えなくなったり、言っていることが理解できなくなることもありますし、突然に強い頭痛や嘔吐を生じたり、けいれんをきたしたり、突然にひどいめまいを生じることもあります。大事なことは、これらの症状が現れたら、迷わず救急車をすぐに呼びましょう。適切な時間であれば、最善の治療を受けることができます。
これら脳卒中を予防するためには、高血圧や糖尿病などのいわゆる生活習慣病を改善することが大事です。当院では、脳卒中予防の管理や治療、また脳卒中になられた方の再発予防の治療を行っています。
てんかん
大脳の神経細胞が異常に活動することで、けいれんを起こしたり、意識がなくなったり、異常の行動を起こしたりします。てんかんの原因としてMRIなどで脳に異常が見つかる場合と、いろんな検査をしても異常が見つからない場合とあります。てんかんの発作は、脳のある部分から始まる部分発作と発作の初めから脳全体が関わる全般発作とがあります。てんかんは、乳幼児期のみで発病するわけでなく、すべての年代で発病します。特に最近注目されているが高齢者のてんかんです。
高齢者のてんかんの原因として、脳卒中の後遺症、脳腫瘍、頭部外傷、中枢性の感染症の他、加齢に伴う脳の異常や認知症などにも起こります。特に高齢者のてんかんは、けいれんを伴わず目立たない発作が多く、ぼうっとして無反応になったり、異常な行動を起こしたりすることがあります。抗てんかん薬を内服することで治療の効果が得られやすいことも知られています。
気になる症状がある方は、MRI・CTによる精密検査をオススメします。